第10章 彼女の苦悩
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ウィンディ・ファスタは朝のランニングを終えて、合宿所内の電話機の前に佇んでいた。国には無い、イマイチ使い方の分からないこの機械。彼は一枚の紙を握りしめてじっと電話機を見つめている。
今日こそ会えることを願っていた。だが今日も彼女は来なかった。彼は会えないことに落胆してしまうのだけれども、先日あった時は今は事情があって走れない、と言っていたから、まだその事情が解決していないということなのだろう。それは仕方のないことだ。
そして時刻は現在午前六時を過ぎたところ、おそらく向こうの合宿所も起床時間を迎えているはずだ。朝の時間は貴重だというが、きっと彼女なら、起きて今日の支度を終えているだろう。あんな時間に起きて走っていた習慣が身についているなら間違いない。
一分でも一秒でもいい、とにかく声が聞きたかった。だからこの機械の使い方を学んでここに立っている。朝からは迷惑だと分かっているが、朝一番に彼女の声が聞きたいとも思った。
ウィンディはそう思って受話器を持ち上げる。握りしめた紙に書かれた番号をゆっくりと確認して押してゆく。最後の番号を打ち終えて呼吸を置くと、プルルルルと聞き慣れない奇妙な音が耳元に聞こえる。
”出てくれる確証はないわよ”
この番号を強引に聞き出し、渋々教えてくれた彼女がそう言っていた。なんでもウィンディがその彼女に聞いた話によると、日本では知らない番号の通知に応対する人間は少ないらしい。
ワンコール、ツーコール……。延々と続くコール音にウィンディは少し不安な気持ちになる。ダメか、と思い落胆のうちに受話器を彼がおこうとする。そんな時に受話器から緊張したような声が聞こえた。
『も、もしもし……?どちら様でしょうか』