第10章 彼女の苦悩
「別に俺はオマエの意見は求めてない。だからカオリが行くと言えばオマエは黙って見送れ。カオリが行かないというなら今日のところは俺は引く」
風丸は一層眉間の皺を深くした、がウィンディの意見を聞いて初めて黙って頷いた。
「ああ、いいだろう。俺は花織の言う通りにする」
花織がこんな奴と出かけるわけがない。風丸にはその確信があった。そして風丸の思う通り、花織の心は決まっていた。だが。
「……」
花織の視界にふっと入ってしまった、冬花の姿。風丸を心配そうにじっと見つめている。他のマネージャーとは違う視線。風丸のことを酷く心配しているようなそんな雰囲気。
どうしてそんな目をするの、今まで一度も彼が怪我をした時だって。そんな目をしたことは無かったくせに。
「行こうぜ、カオリ」
ウィンディが花織を見つめて手を差し伸べる。だが花織の表情を見て、少しだけ先刻に比べ彼女の表情が陰ったことに気が付いた。彼女は自分でない、他に意識を向けている。
「カオリ?」
花織はハッと我に返る。そしてウィンディを、そして風丸を見た。彼女は申し訳なさそうに微笑む。その表情には何か申し訳ないという感情以外のものが含まれているのは明確だった。ウィンディはちらりと横目で一瞬風丸を見る。
「……ごめんなさい、ウィンディ。今日は気分が乗らないから」
花織が頭を下げ、ウィンディの申し出を断る。風丸を含めたイナズマジャパンのメンバーには結果は分かっていた。だがその言葉に違和感を覚えたものが数名いた。
いつもの彼女ならば気分が乗らないなどと、そんな曖昧な言葉で断ったりはしない。