第10章 彼女の苦悩
「お前、何をしに来たんだ。花織に何か用か?」
恐ろしく冷たい声だった。風丸は一足先に合宿所に戻っていたのだが、いつもよりも戻ってくるのが遅い花織を時計を見つつ待っていた。そんなときに食堂へ春奈が慌ててやってきて言ったのだ。グラウンドで花織が、他国の選手に口説かれているようだと。
その言葉に驚く選手たちの中で、風丸はすぐさま立ち上がり合宿所を飛び出した。そんなことをする人間に思い当たる人物がいたからだ。風丸の予想は大当たりでグラウンドに立つ花織の傍には、自分とよく似た背格好の男が立っていた。
「俺はカオリをデートに誘いに来たんだ。邪魔をするな」
ウィンディが花織の前に仁王立ちをして言ってのける。風丸はその言葉に忌々し気に顔を歪めた。
「花織は俺のガールフレンドだって言っただろ。人の恋人を誘惑するな」
「俺はFFIの目的である国際間の交流をしているだけだ。了見の狭い束縛男に何を言われる筋合いもない」
バチバチと火花が散りそうな勢いで風丸とウィンディは睨み合う。ウィンディはともかく風丸は普段の落ち着きを払った態度とは違って、敵意を剥き出しにしている。花織はそんな二人に口出しなどできず、やはりおろおろとするしかなかった。
そのうちにわらわらと見物人ことイナズマジャパンの選手たちが春奈に連れられてやってきた。その中の数名はウィンディに対して険しい視線を向けている者もいる。ウィンディはそんな見物人を一瞥してふう、とため息をついた。
「人が集まってきたな。俺は早く花織と出かけたいのに」
少し苛立った様子でウィンディが顔を顰める。だが、風丸も一層険しい顔をして腕を組んでいる。このままでは埒が明かない。白黒はっきりつけたいウィンディはびしっと風丸を指さす。