第10章 彼女の苦悩
穏やかに微笑んでウィンディが言う。花織は少しどきりとした。花織を見つめるウィンディの瞳が、自分を優しく見つめる風丸に似ていた。花織は面映ゆそうに俯く。
「ありがとう、ウィンディ。気に掛けてくれて」
花織が柔らかくウィンディを見つめて微笑んだ。ウィンディはその表情に胸がきゅんとときめくのを感じる。褐色の肌に赤みが差す。ウィンディは思わず照れて、花織から目を逸らしてしまう。
微笑むと一層可愛らしい、さすが俺の運命の人だ。そんなことを思いながらウィンディはにやける口元を必死に堪える。何とか気持ちを落ち着け、花織に視線を向けた。
「俺がカオリに会いたかっただけだ、なんてことはないさ。……それより、午前の練習は終わりか?終わりなら、今から俺とデートしようぜ」
「……えっ」
花織がきょとんとした表情を見せる。そういえば、前回別れるときにデートに誘いに来る、とそんなことを言っていたことを思い出した。冗談ではなかったのかと花織は困り顔でウィンディを見つめた。
「ウィンディ、私は……」
「グラウンド整備が終わっていないのか?だったら俺が代わりにやる。花織は出かける仕度をしてきてくれ」
花織の断りを入れようとする言葉は聞く耳を持たないようで、ウィンディは彼女の言葉を遮った。むしろ花織の手を離し、花織が先ほどまで使っていたブラシを手に持つ。
「ちょっと待って、ウィンディ……」
引き留めようと花織がウィンディの手に触れる。その時、ウィンディの背後に彼よりも濃い青髪の少年が駆けてくる姿が見えた。花織はハッとする、そして花織のその表情を見て何かを悟ったウィンディも背後を振り返り、そして嫌そうに顔を顰めた。
「チッ……、面倒なのが来たな」
ウィンディが苦々し気に呟く。ぽんと手を離してブラシを地面に置いた。全力のスピードで駆けてきた風丸は二人の前で立ち止まると宿的を冷たく睨みつける。