第10章 彼女の苦悩
さらさらと長い髪を靡かせてウィンディが駆けてくる。その表情は花織を見つめ、嬉しそうに綻んでいる。彼は花織に駆け寄るとぎゅっとブラシを持っていない花織の左手を握った。
「カオリ、久しぶりだな。会いたかった」
そう言ってさりげなく花織の頬に右手を這わせる。花織はウィンディの唐突な行動に困惑して微苦笑を漏らす。
「ウィンディ……、今日はどうしたの?」
花織はブラシを地面に置いて、右手でさりげなく頬に添えられたウィンディの手に触れて、そっと彼の手を下す。ウィンディは花織の両の手を強く握って真っすぐな目で花織を見つめた。
「カオリに会いに来た。カオリ、どうしたんだ?ずっと走ってないのか?全然会えないから心配だったんだぞ」
ウィンディは悲し気に眉間に皺を寄せてじっと花織を見つめている。ウィンディはずっと、朝花織に出会ったあの日から、花織に出会えることを願って走っていた。花織が来ないかとセントラルパークで足止めして待ちわびる日もあった。だが彼女は一向に姿を見せなかった。だからここまで会いに来たのだ。
「ごめんね。今ちょっと事情があって走れなくて……」
自分が走らないことでウィンディを心配させてしまったのか、そう思い花織は申し訳なさそうにウィンディに謝罪する。本当は花織だってウィンディに会う会わないは関係なく朝のランニングをしたいのだが、風丸と鬼道から口を酸っぱくして禁止を言われているからずっと控えている。影山がこの島にいる以上、どうしようもないことだった。
「カオリが元気ならそれで構わない。今日、顔が見られて安心した」