第9章 畏友
風丸は一人でアメリカエリアまで花織を迎えに来ていた。夕刻、冬花と一緒に出掛けたはずの花織が戻ってこなかったからだ。冬花に花織の所在について尋ねれば土門に会い、話をしてから帰ると言っていたという情報を得て彼はアメリカエリアへやってきたのだ。彼女の帰りが遅かったし、何よりこの島には影山がいるのだということを思えば当たり前の対応だった。
「一郎太くん……!」
アメリカの合宿所の談話室で座って待たされていた風丸を彼女の声が呼んだ。風丸は立ち上がる。開いた扉の先に花織が驚いた様子で立っている。
「どうしたの?何でここに?」
「花織を迎えに来たんだ。どうせ、ひとりで帰るつもりだっただろ?」
風丸の指摘に花織が言葉を詰まらせて目を逸らす。くれぐれも一人にならないように、と言われているがそこまで徹底しなくても、と思った。花織はひとりで帰れないほど子供でもないのにここまで心配されるのはある意味恥ずかしい。
「何かあったらどうするんだ?」
厳しい表情で風丸が花織に問いかける。花織はしゅんとした表情で俯いた。ああ、責めてるわけじゃないんだと風丸が明らかに落ち込んだ様子の花織に宥めるように花織の髪を撫でる。
「俺はただ、花織が心配なだけなんだ」
影山だけじゃない、ウィンディ・ファスタという脅威もあることだし、風丸の気も休まらないのだ。ただ彼は単純に花織が心配で堪らない。花織はそんな風丸の意を組んで申し訳なさそうに彼を上目遣いに見上げる。
「一郎太くん……。ごめんね、心配かけちゃって」
このまま抱き合わん勢いでふたりだけの世界を彼らは作り出す。お互いを見つめ合って、まるでハートマークでも飛び交いそうな勢いだ。そんなふたりのいちゃつきっぷりにあー、と気まずそうに土門が声を割りいれた。