第2章 選ばれた精鋭
風丸にとって彼女が近くで応援してくれればそれが何よりの力だ。サッカーをする風丸の隣にはいつだって花織の応援があった。花織がいてくれれば風丸は本領以上の力を発揮できるかもしれない。
「でも、少しだけ悩んでるんだ。私なんかが日本代表のマネージャーで本当にいいのか」
「え?」
彼女は迷いなくマネージャーになるのだと思った。考えもしなかった花織の言葉に風丸が彼女を凝視する。花織は少しだけ俯き、細い眉を困ったように寄せている。艶やかな黒髪が風に揺れ、彼女の表情を隠そうとしていた。彼女が隠そうとしている感情は紛れなく不安だ。
「何言ってるんだよ。花織はいつも俺たちを支えてくれてるじゃないか。それに監督に能力を評価されてマネージャーに選ばれてる」
マネージャーとしての仕事ぶりは監督のお墨付きだろう。それに風丸にとって不本意だが花織はチームメイトからの人気が高く、その柔らかな雰囲気から相談事を持ち掛けやすい。キャラバンに乗っていた時も彼女は選手の悩み相談に乗っていた。十分だろう。
「でも本当に日本代表を支える力が私にあるのか……。だって日本を背負って戦うみんなを一番近くで支えるんだよ。今までの中学校の部活のマネージャーと一緒にはできないよ」
風丸は花織の心情を察する。彼女は自分が思うよりも日本代表という立場に責任の重さを感じているようだ。風丸をはじめ選手たちは代表にまだ選出されていないからなのかもしれないが、責任よりも世界を相手に戦えるかもしれないという期待の方が大きかった。それに今まで練習して強くなってきたという自信がある。フットボールフロンティア優勝、地上最強チームの一員。誇れるだけの功績が残っている。