第9章 畏友
「そう、だったんだ……」
花織はさすがにショックで何を言ってよいか分からなかった。重たすぎる一之瀬の秘密と覚悟に俯いてしまう。日本にいたときはあんなに元気にフィールドを駆けていた彼が、そんなことになっているなんて。
「秋ちゃんも知らないの?」
「一之瀬がこの前直接話そうとしたみたいだけど……。言えなかったみたいだ」
「そっか……」
花織はその答えに俯く。一之瀬の想い人の秋にも言えなかった秘密。土門一人で抱えるのは大変だったろう。一之瀬は今なお一人で苦しみ続けているわけか。花織はそう思って顔を上げる。
「一之瀬くん、今は……?」
「練習終わってから病院に行ってるよ。入院前の手続きをしにいくって言ってたな」
「……そう」
正直助かったと思った。久しぶりに一之瀬の顔を見たかったが、今はどんな顔をして会えばいいか分からない。誤魔化すために何も知らないと嘘をつくつもりではあるけれど、今は動揺の方が大きすぎて嘘が見抜かれてしまうかもしれない。
「なあ、花織ちゃん」
土門ががしっと肩を掴む。真剣な表情で土門は花織を見つめた。
「絶対に黙っててくれよ。一之瀬、気を遣われて真剣な勝負ができなくなるのが一番いやだって言ってるんだ。だから頼むよ」
「わかってる。誰にも……」
花織が強く頷いて土門を見上げた時だった。がちゃりとノックもなしに土門の部屋の戸が開く。聞かれていただろうか、背筋がひやりとして二人は扉の方に視線を向けた。そこに立っていたのはアメリカ代表の少年二人だった。
「ワァオ、マーク!!ドモンが女の子を連れ込んでるよ!!」
「お邪魔だったんじゃないか、ディランがノックもせずにドアを開けるからだぞ」
ビックリしながら燥ぎたてているのは青いアイガードを装着したくすんだブロンド髪をオールバックにしているディラン。呆れた様子でディランと花織の肩を掴んだ土門を見比べているのは、黄土色の髪に通った鼻筋、グリーンの瞳が特徴のアメリカ代表ユニコーンのキャプテン、マーク・クルーガーだ。