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諸恋

第9章 畏友




「何かあったの?」

じっと花織が土門を見上げる。土門はうっ、と困ったような表情を見せて俯いた。いうべきか言わないべきかで迷っているようだ。だが、心配そうな目で自分を見つめてくる花織の視線を辛く受け止めながら土門は悩む。彼女をここまで連れてきておいて何なのだが、今になって自分の胸の内に秘めている誰にも話していない秘密を、秘めておくべきではないかと思い直している。

「えーっと、あの……なんていうか」

ただ、自分一人では抱えきれない重い秘密だ。チームメイトには話せない秘密。チームとは関係ない、ただの友人関係の花織にこそ、話ができるのではないかと思ってここまで連れてきた。でも今になってしり込みしている。

「私には、話せないかな……?」

心配そうに土門の顔を覗き込みながら花織が微笑む。こんなふうに見つめられるとつい、話してしまいそうになる。親友と誰にも言わないと約束しているのに。でも花織なら、雷門に来てから一之瀬も土門も仲良くしてきた花織になら。男女の関係抜きに信頼できるこの子なら、話してもいいんじゃないだろうか。

「実はさ、花織ちゃん……」
「うん」
「一之瀬の事、なんだけど……。誰にも言わないでくれるか?」

誰にも言わないで、ということに関しては土門は花織に信頼を置いている。自分がスパイであることをずっと黙ってくれていた過去があるからだ。花織は神妙な顔をして頷く。

「誰にも言ったりしないよ」

彼女の黒い瞳がじっと土門を見据える。土門は観念したように目を伏せて両手を上げた。

「オーケー、話すよ。ただし本当に黙っててくれよな。一之瀬にも口止めされてるんだ」

そう前置きをして土門は秘密を語った。一之瀬が幼少の頃に遭った交通事故の後遺症に今も苦しみ続けていることを。完治したかと思われた彼の怪我は、致命的な要因をいまだ抱えていて一刻も早く手術しなければ二度とサッカーができなくなるどころか、命すら危ないのだと。次のイナズマジャパンとの試合がおそらく最後の試合になることを。
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