第9章 畏友
花織を置いてキャラバンを去ってしまったあの後、花織はそんなことをしていたのか。風丸は拳を握る。自分を閉ざして雷門を遠ざけてしまったあの時、彼女がくれたいくつものメールは保存している。
「酷い人だよね、全部風丸くんのためなんだよ。花織さんって」
吹雪が微笑みながら言った。そう、彼女が吹雪のために施したすべては全部風丸のためだ。出会った時からずっと風丸しか見えていなかった。
「だから僕は風丸くんが羨ましいんだ。僕がどれだけ好きでいても振り向きさえしない彼女に、こんなに大切に思われてる風丸くんが」
そんな風に思っていたのか、風丸は少し目を大きく見開く。風丸は以前、吹雪の全てに嫉妬していた。吹雪が自分を羨むことなどないと思っていた。吹雪は携帯に視線を落とす。携帯の画面には停止された動画。祈るようにピッチを見つめる花織の姿が映っている。
「でもそれ以上に花織さんが幸せなら、それでいいかなって思ってるよ」
彼女は大きな優しさで吹雪を包み、暗闇に蹲る吹雪に寄り添ってくれた。優しさと、何より意志が強くて一途な彼女を吹雪は今でも恋い慕うと共に感謝している。だから彼女には誰より幸せになってほしいと思う。
「だから、幸せにしてね。花織さんの事」
「……ああ」
吹雪の言葉に風丸は力強く頷く。吹雪はふっと目を伏せて笑って携帯を閉じた。そしてゆっくりと立ち上がる。そして思い出したように風丸に告げた。
「僕はこの動画、君たちの結婚式で使うつもりだから。思い出の映像はばっちり僕に任せてね」