第9章 畏友
画面にはやはりピチピチのユニフォームをきた風丸と、花織が映っていた。パンッと乾いた音、そして画面の中の花織が風丸の頬を叩く。これは。
『私は強さなんてどうでもいいよ。弱くたって一郎太くんと一緒にサッカーができれば、隣を走ることができればそれでいい』
花織が風丸の目を覚ますために、声を掛けてくれた時の映像だ。
『私は一郎太くんの速さだけを好きになったんじゃない。私が貴方を好きになったのは、貴方がどんな時でも私に優しくしてくれたから。廃部になりそうなサッカー部を救うため、なんていって助っ人に行ってしまうような仲間思いの人だったからだよ。私は真面目で努力家で、仲間思いで……。そして私と一緒に走ってくれた風丸一郎太が好き』
耳に届く彼女の声がドキドキと風丸の胸の鼓動を早める。今聞けば砂糖を吐きそうなほど甘い言葉だが、映っている花織はとても真剣に風丸に愛を叫んでいて、それがとても愛おしかった。自分を見つめて涙を流す花織を思うと今でも胸が熱くなる。
「僕はね、この時の風丸くんを見て笑えないんだ。一歩間違えればこっち側にいたのは僕だったかもしれないから」
シーンが移り変わり、動画の中で後半が始まった。吹雪は動画の再生を止めてイヤホンを外す。風丸も付けていたそれを外して吹雪に返した。吹雪は柔らかく笑んで風丸を見つめている。
「花織さんがね、君の大切な人が僕を支えてくれた。キミの帰ってくる場所を守るために。君がいつ戻ってきてもいいようにって」
「花織が……」