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諸恋

第9章 畏友




ウィンディ・ファスタ。予期せぬライバルの出現に風丸はモヤモヤとした感情を久しぶりに抱いていた。チーム内にいる彼女を慕う人間は半ば自分を応援しているような部分もあって、まだ容認できた。彼女の自分を大切に思う感情を知ってここのところは寛大でいられたと思う。

あのあと真っすぐ宿舎に戻り、花織がウィンディと今までどういうやり取りをしたのかを花織に問い詰めた。聞いてみれば早朝自主練中にすれ違って話をしただけだというではないか。その時の花織は特に奴に特別な感情を抱いている様子もなかった。察するに、勝手にアイツが花織に恋心を抱いているだけらしい。

だがそれでもウィンディは風丸にとって脅威であった。何しろ日本人にはない大胆さで花織に詰め寄っている。花織は押しにはあまり強くないし、どんな巧みな話術で花織をウィンディが惑わすか分からない。あれだけ本気で風丸に張り合ってきたということは、何に惹かれたのかは知らないがそれだけ花織に対しての想いが強いということだ。極力遠ざけていたいというのが風丸の本音だ。

「風丸くん」

真剣な顔で思い悩む風丸にふんわりとした声が掛かった。風丸はその声の主を見上げる。声同様にふわっとした銀髪の少年は先日復帰したばかりの吹雪だ。吹雪はにこにこして風丸を見つめている。

「どうした吹雪、必殺技の事か?」

最近、吹雪と風丸は次の試合に向けてと連携必殺技の練習をしている。そのせいか一緒にいることも多くなった。吹雪も花織を慕っているライバルで、かつては吹雪のスピードと花織への気持ちに風丸は酷く嫉妬したものだが、よく話してみるとやはり良い仲間だ。……アイツとは違って。

「ううん。風丸くんが怖い顔してるから気になってね」
「ああ、そうか……」

風丸は吹雪の言葉に微苦笑を漏らす。よっぽど先日の件が印象的で頭に残っているのか、あの自分によく似た憎々しいライバルのことを考えてしまうのだ。そのおかげで練習に気合が入るのは良いのだが、どうにもモヤモヤする気持ちがあってすっきりしない。

「気合が入ってるのはいいんだけど、入りすぎててもいけないからね。気分転換できるものを持ってきたよ」
「気分転換?」
「うん、絶対に悩みなんて一瞬で吹き飛ぶと思うな」
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