第9章 畏友
花織に接していた時より低い声でウィンディが反応した。花織を他所に二人は睨み合う。先に名乗ったのはウィンディだった。
「俺はウィンディ・ファスタ。コトアール代表、リトルギガントの選手だ。で、お前は?」
南アフリカの代表かと風丸はウィンディをじっと睨む。花織の前に立ち塞がってウィンディが花織に手出しできないようにした。花織は二人の雰囲気の悪さにどうすることもできずに立ち尽くしている。
「俺は風丸一郎太。イナズマジャパンの代表で、花織の恋人だ」
「コイビト?」
聞き慣れない単語にウィンディが顔を顰める。風丸は睨み合ったまま、はっきりとウィンディに宣言した。
「ボーイフレンド、だ」
どき、と花織は風丸のその紹介の仕方に胸がときめくのを感じる。こんなに男らしく紹介してくれるとは思わなかった。ウィンディはその言葉に衝撃を受けたようで益々眉間に深い皺を寄せ、風丸から視線を逸らして花織を見つめた。
「は?それは本当か、カオリ」
「うん、一郎太くんは私の……」
花織が改めて風丸を紹介しようとするが、それよりも速くウィンディがキッと風丸を睨みつけた。先刻よりもさらに殺気に近いものを孕んでいる。風丸も負けじと睨み返し、むしろ勝ち誇ったような笑みを見せる。だから近寄るなよ、風丸の微笑みはそう言っていた。
「お前がカオリのボーイフレンドだろうが関係ない。俺とカオリが話したり、出かけるのを止める権限なんてないだろ」
「……っ」
口の減らないウィンディに今度は風丸が苦々しい表情をする。だが、それは花織がこの男を迷惑だと思っていなければの話だ。今彼女は明らかにウィンディの襲来に戸惑っていた。さほどは親しくないのだろう。
「それは花織が迷惑じゃなかったらの話だ。花織がお前を迷惑だと思ってるなら、俺は花織の彼氏として花織を守る義務がある」
「カオリが俺を迷惑だなんて思うわけないだろ?一緒に朝のランニングをした仲なんだぜ?」
ふふん、と自慢げにウィンディが笑った。そんな事は知らない、とばかりに風丸の表情が引き攣る。花織が影山の話が上がるまで早朝に走っていることも、彼女が隠していたから知らなかった。