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諸恋

第9章 畏友




「カオリ!」

風丸にとって聞きなれない声が彼女の名前を呼んだ。その少年は正面から花織に向かって走ってきて、いきなり花織の手を握る。風丸は思わず目を白黒させた。何だ、こいつは。

「最近会えなかったから心配したんだぞ。朝練やめたのか?」
「……う、ウィンディ?」

スカイブルーの髪の少年はものすごい剣幕で花織に迫る。花織はその勢いに押されて戸惑っているようだった。だがその少年の名前を知っていることと朝練、という言葉から二人は知り合いなのだということを風丸は察する。それにしても、世界には三人自分と似ている人間がいるというが、こうも似ている人間がいるとはと思考の隅で思った。が、今はそれ以上に大切なことがある。

「ずっと朝セントラルパークを走ってたんだ。カオリに会えないかなと思ってさ。今、時間あるか?この雨だ、ジャパンも練習できないだろ?どこか行こうぜ」
「あ、あの、ウィンディ……」
「国際間の親睦もこの大会の目的だろ。な、行こう」

あまりの勢いに困惑する花織にウィンディは畳みかけるように言う。強く花織の手を握りしめて真っすぐに花織を見つめるその目は、風丸に言わせれば完全に花織に特別な感情を抱いているとわかった。

何しろ花織の隣に立っている風丸が見えてすらいないのだ。風丸は眉間に皺を寄せてぐいと荷物を持った手で、花織が先ほどからウィンディと名を呼ぶ少年を押しのける。

「お前、誰だ。花織に何の用だ?」

冷え切った声と目でウィンディを見据えながら風丸が問いかける。急に押しのけられたウィンディはやっと風丸の存在に気が付いて不機嫌そうに顔を顰めた。

「……お前こそ誰だ。ジャパンのジャージ……、ということはカオリのチームメイトか」
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