第8章 遠ざかる光
「私は買い出しに、不動くんは?」
「フーン、買い出しねえ……」
花織の質問には答えず不動はあまり興味なさそうに花織の言葉を繰り返す。花織は不動の態度に困った様子で顔を顰めようとしたが、それよりも先に不動が動いた。
「なァ、花織チャン」
じりじりと花織に迫りながら不動が花織の名を呼ぶ。花織は身構えて後ずさる。不動はにや、と笑ってすっと花織の頬を撫でた。
「こんなトコ、一人で歩いてたらよぉ」
そのまま不動の手が花織の顎を持ち上げる。花織は困惑して動けずに不動を見つめる。不動は花織に顔を寄せて囁く。
「悪い奴に誘拐されても知らねえぜ?」
「……っ、変な冗談はやめて」
花織が軽く不動の身体を押し返す。不動はおっと、と言って簡単に花織から離れた。そして悪ふざけをするときの顔ではなく、先ほど出会った時と同じように真面目な顔をして花織を見つめる。
「フン、まあ鈍感女に何言っても仕方ねえか」
そういって不動は花織の手から買い物袋を半ば無理やり奪い取る。花織があ、と声を上げて手を伸ばすも、不動は花織に背を向けて歩き出す。
「ほら、帰るぜ。花織チャン一人だと危なっかしいから一緒に帰ってやるよ」
どういう風の吹き回しだろうか。分からないが、以前の出来事やこれまでのチームへのかかわり方で不動は決して悪人ではないのだということは分かっている。花織の荷物を彼は持って行ってしまったし、一緒に帰るしかないだろう。
「待って、不動くん」