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諸恋

第8章 遠ざかる光




花織は一人でイタリアエリアへ買い出しに出ていた。正直買い物はどこでも良いのだけれども、気分転換に比較的近い別エリアを選んでいた。必要なものを買い終えてそろそろ戻ろうかと考える。今は昼休憩中だから午後の練習に間に合うように帰らなければならない。

「あれ……?」

花織はふと今しがた、すれ違った人物のせいで足を止める。振り返ったがその姿はもうなかった。だがその人物の姿ははっきりと目に焼き付いている。

「今のは……」

ドレッドヘア、特徴的なマントとゴーグル。それは鬼道有人のトレードマークだ。でも今すれ違ったのは鬼道ではなかった。でも驚くほど鬼道に似ていたような気がする。遠目から見れば、鬼道だと思って声を掛けに行ったかもしれない。花織はぎゅっとこぶしを握る。

鬼道のファンだろうか、それにしては雰囲気が異様だった。

路地裏の方へ今の人物は歩いて行った。花織は気になって、追いかけてみようかと花織が路地裏へと足を踏み出す。だがそれと同時に後ろから肩を掴まれた。

「何してんだよ、こんなとこで」
「……不動くん」

花織の肩を掴んだのは不動だった。いつものにやにやとした表情ではなく、じっと真剣な顔をして花織を見つめている。

不動はあの夜の一件以来、変に花織に嫌味を言うことは減った。お互いに何でもなかったかのように接していた。正直、二人きりになるのはあの日以来だった。花織はなんでこんなところに不動がいるのだろう、と疑問に思いながら彼の方を向き直る。
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