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諸恋

第8章 遠ざかる光




***

朝のランニングを終えてシャワーを浴びる。もうそれがライオコット島に来てから日課として定着し始めていた。昨日から対アルゼンチン戦に向けての練習を開始している。

「あれ、おはよう春奈ちゃん。どうしたの、こんな朝早くに」

朝食を作りにはまだ早い。それなのに春奈がキッチンで大量のおにぎりを作っているところを目撃した。花織は不思議そうに春奈を見つめる。

「あ、花織先輩おはようございます!ランニングですか、風丸先輩と?」

花織は言葉に詰まる。春奈に指摘されて花織は気が付いた。私、そういえばもう随分彼と一緒に走っていない。彼と一緒に走ることができるようにとひとりで練習を積んでいるけれども、彼の練習量を考えて共に練習をすることがいつの間にかなくなっていた。ネオジャパン戦前に一緒に特訓したのが最後。肩を並べて走ったのは代表選抜戦よりも前になる。

やっぱり、見えないところで少しずつ距離が開いている。花織は少し眉根を寄せる。何も答えない花織に首を傾げ、春奈が花織を呼ぶ。

「花織先輩?」
「あ、ううん……。今日は自主練だよ。春奈ちゃんこそどうしたの?」

花織が春奈に早朝からおにぎりを作っている事情を聞けば立向居の新キーパー技を編み出すために一年生が総出で朝練をしているらしい。その差し入れを作っているのだと春奈は花織に説明した。

「よかったら手伝うよ」
「いいんですか?助かります!」

春奈一人では大変だろう。特に一年生には壁山もいることだし、たくさん量がいるはずだ。花織は流しで手を洗い、しゃもじを握る。

「朝ごはんの準備も、私から秋ちゃんに説明しておくから春奈ちゃんは特訓の方に行ってあげて」
「え?大丈夫ですか?」

春奈がおにぎりに海苔を巻きつつ、花織を見た。花織はうん、と微笑んでおにぎりを握り始める。マネージャーとして選手のために、チームのためにできることは全力でやる。彼の相応しい人となるために。

「私が春奈ちゃんの分まで頑張るから。チームのためにも春奈ちゃんは特訓の方に集中してあげて」

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