第8章 遠ざかる光
夕日が海に沈もうとしている。あたりをオレンジ色に染めていて、水平線の向こうに太陽がゆっくりと飲み込まれていく様は圧巻だ。花織はひとりでセントラルパークの海岸に掛けて夕焼けを眺めていた。
先刻の出来事が目に焼き付いて、思考回路がネガティブに染まって嫌になる。ファンに囲まれるくらい、あったってしょうがないのに。優位だったイギリス代表に勝利してイナズマジャパンはさらに世界に認められた。雑誌の取材だって来ているほど、ファンがいない方がおかしい。
でもそれすら嫌で、ファンサービスだとしても握手だったり、一緒に写真を撮ったり、微笑みかけることすら妬ける。ああなんでこんなに嫉妬深いんだろう。
日本代表、風丸選手の恋人なら。
我儘なんて言わずにもっと広い心を持って、いつも笑顔で優秀で誰よりも速くて……。そうでなければ釣り合わない気がする。どうして今まで気にならなかったんだろう。
今までは自分の気持ちばかりに目がいっていたからだ。選べる立場でもないのに二人の間で揺れていた。だから今になってやっと彼の周りを取り巻く人間の存在に気が付いた。
なんで私みたいな普通の女の子が彼の恋人の座に座り続けていられると思っていたのだろう。
”でも女の子が花織だけじゃないって気づいたら、風丸他の子に乗り換えちゃうかもね”
ここにきてマックスの言葉が胸に響く。潮風に長い黒髪が靡いた。それを手で押さえながら花織は目を伏せた。
もっと頑張らないと。一郎太くんに釣り合うような、どこに出しても恥ずかしくないようなマネージャーでいないと。胸の中でそう決意する。そうするしか自分を安心させる方法はない。