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諸恋

第8章 遠ざかる光


***

「花織……?」

風丸は押し寄せるファンだという女の子たちの対応をしながらちらと視界に映った少女に気を取られた。今そこのパラソルテーブルから去っていった黒髪の少女がどうにも彼女に重なって見えた、というよりも彼女だと思った。

でもどうしてこんなところに、木野たちと一緒に買い物に行ってるんじゃなかったのか?

風丸は疑問に思いつつもファンの子たちの対応を他所にしてふらりと彼女が居たかもしれない場所へ向かう。彼女が居たテーブルの近くから、彼女の姿を探す風丸に声がかかった。

「誰を探しているんだ」

低めのその声はチームメイトのものだった。腕を組んで風丸を見据えている鬼道の声だ。鬼道の隣には佐久間もいる。心なしか鬼道の方は機嫌が悪いような気がした。

「あ、いや……。ここに花織がいたような気がしてさ」

我ながら花織の事ばかり考えていると風丸は頭を掻きながら鬼道の問いかけに答えた。鬼道は眉間に皺をよせ、ため息交じりに呟いた。

「気のせいじゃない。さっきまで花織はここにいたぞ」
「えっ……?」
「一人で何か悩んでいるようだったな」

鬼道が自分と彼女が二人で過ごしていたことは包み隠して風丸に告げる。風丸は目を大きく見開いて鬼道を見た。花織はひとりで行動しているのか。木野たちとは一緒じゃないのか?様々な疑問が頭の中を巡る。そして最後には彼女との昨日のやり取りを思い出した。
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