第8章 遠ざかる光
「お前も風丸がくれたものなら何だって嬉しいだろう?」
そう補足して本音を一般論で掻き消そうとした。花織は少し考えるような表情をして、鬼道を見つめた。
「そうですね。私も自分のために彼がくれたものなら何だって嬉しいです」
そう呟きながら彼女は首に下げているネックレスに触れた。ナニワランドで風丸が贈ったはじめてのプレゼント。鬼道は少し憎々しげにそのネックレスを睨むが、花織はそのゴーグルの下の視線には気づいていない。
「ありがとうございます、相談に乗ってくださって……」
微笑みつつ花織が鬼道に礼を述べる、だがその途中で笑顔と彼女の言葉が消えた。大きく目を見開いて鬼道の背後を見つめている。鬼道が振り替えればそこにはファンであろう多くの女子に囲まれている円堂、ヒロト、そして彼女の恋人の姿があった。
「……」
鬼道の隣の椅子ががたん、と揺れた。鬼道が振り替えれば花織が寂しげな表情を浮かべて立ち上がっていた。何かを買ったのであろう、紙袋をもつ手が微かに震えている。
「そろそろ佐久間くんも戻ってくるでしょうし、私も買い物に戻ります。鬼道さん、お話聞いてくださってありがとうございました」
「花織……!!」
鬼道が慌てて立ち上がって花織を引き留めようと手を伸ばしたが、彼女はこの場にいたくないと言わんばかりの速さでこの場を立ち去った。花織が立ち去ると同時にどこかでふたりの様子を見ていたらしい佐久間が鬼道のもとへと駆けてくる。
「鬼道、月島はどうしたんだ?」
「アレだ」
苦々しい表情をしながら鬼道が顎で円堂たちを指し示す。佐久間はその光景を見て何となく彼女がこの場を去ってしまった理由を察した。
「風丸……。月島とデートじゃないんだな」
「ああ。花織はひとりで買い物に出て、アイツへの贈り物を考えていたらしい」
ゴーグルの中から妬みのこもった視線を鬼道は風丸に送る。自分があの男の立場にあったなら、花織にあんな顔をさせたりしないのにと久々に思った。