第7章 国を背負う選手
***
キャプテンである円堂の姿が見当たらないまま、他のメンバーは親善パーティーへと向かった。遅刻するわけにはいかなかったし、何より秋が付いているから大丈夫だろうという判断だ。
ロンドンパレスはたくさんの街灯に照らされ、中央には大きな噴水が、また白い薔薇の生け垣などがありとてもロマンティックな雰囲気であった。まるで映画に出てくるセットのようだと花織は思う。
「失礼、レディ」
花織の分の飲み物を取りに行った風丸と少し離れた際、声を掛けられて彼女は振り返る。背の高い、髪色だけは風丸によく似た英国人が立っていた。この人は確かイギリス代表のキャプテンだったはずだと花織は頭の中で考える。
「楽しんでおられますか?……申し遅れました、私、ナイツオブクイーンのキャプテンエドガー・バルチナスです」
「はい、お招き頂きありがとうございます。私はイナズマジャパンのマネージャーの月島花織……。カオリと申します」
海外では名前はファーストネームで呼ぶことが多いからと、花織は名前を強調する。花織が自己紹介をすればエドガーは彼女を見つめて微笑む。
「とても美しいドレスですね。花のように美しい貴女によくお似合いだ」
さらりと日本人には無いスマートさでエドガーが花織を褒める。花織は左手で顔を隠して顔を少し背けた。
「……いえ、そんな」
「カオリさん。どうでしょう、静かな所でお話でも」
お誘いの言葉に花織は微笑んで見せたが、内心少し焦っていた。相手チームのキャプテンであり、主催者に近い彼と話す事も必要だろうが、花織は正直彼と話している気分ではなかった。何となくエドガーの雰囲気が苦手なのだ。
「花織」
その時助け舟を出すように声が掛かった。そこにいたのは鬼道だった。花織は表情には出さなかったものの鬼道には彼女が安堵したような空気が伝わった。花織はエドガーを振り返って、軽く会釈をする。
「ごめんなさい、先約がありますので」
鬼道が差し出した腕に花織はそっと腕を絡める。そうしろ、と鬼道が目で言ったのが分かった。花織が断りを入れればエドガーは残念そうに微笑む。