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諸恋

第2章 選ばれた精鋭




緑川はそう言いながら目の前の少女を眺める。セミロングの黒髪に白い肌。優し気で柔らかな印象を見せる黒い瞳。大人し気な雰囲気は大和撫子という言葉に遜色ない。それでいていて中学生にしては育ちすぎたプロポーション。可愛らしい少女が揃う雷門のマネージャーの中でも、やけに目を引いた。

そして敵という立場からでも見えた、彼女に恋情以上の想いを寄せる男の存在。特に先ほど例に挙げた二人はかなり花織に熱を上げている。ヒロト曰く、彼女はそのうちの一人風丸という男子と交際をしているらしいが、それでも彼女を慕う男子は増えるばかりだとか。うっかり恋に落ちれば厳しい、そして負け確定のレースに巻き込まれることは間違いない。

「ヒロト、よっぽど頑張らないとこの子を落とすのは無理だと思うよ。永遠に磯鮑の片思いで終わりそうだ」
「ああ。だから俺は遠慮はしないよ。何に対してもね」

少なくともこの会話は想い人の前で繰り広げるものではないだろう。花織は困ったような表情を浮かべる。だがそれでもにっこりとヒロトが緑川と花織に微笑みかけた。朗らかな笑みだったが、彼の瞳はとても挑戦的だった。彼のエメラルドグリーンの瞳は静かな闘志を燃やしている。

「花織さん。俺たち体育館の場所が分からないんだ。よかったら案内してくれないかな?」

ヒロトの態度は彼女に対する親愛を孕んでいた。君を名前で呼ぶことで、少しは俺たちの距離を払えるだろうか。
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