第7章 国を背負う選手
「決め手は何だったんですか?」
春奈が花織の髪を纏め終えて尋ねる。綺麗に髪はアップにされていた。花織は彼女の問いかけに鏡に映る春奈を見つめて真っすぐに言い切った。
「青は、一郎太くんの色だから」
恥ずかしげもなく、言い淀みもせず花織はそう言った。春奈は思わず目を丸くする。思わず春奈の方がたじろいで、なんといっていいか分からなくなってしまう。
「そ、それが理由ですか?」
「そうだよ」
花織は白い華やかな花の飾りを付けながら、微笑みすらして言う。だがその頬は若干桃色だ。
「元々青が好き、というのもあるけど……。やっぱり青なら一郎太くんの隣でも似合うかなって」
厚かましいかな、なんて不安そうに花織が笑う。春奈は今抱いている感情に既視感を感じていた。そう、秋葉名戸と試合するとき……。メイド服に着替えたときのことだ。
あの時花織はメイド服を着ていた自分に風丸が幻滅しないかを心配していた。今日はどうだ。風丸に最も相応しい色を選んだことが厚かましいかを不安げに感じている。
全くこの人は……。
春奈は後輩でありながらも、この人のことを思わず呆れてしまうような可愛らしさを持っていると感じてしまう。どれだけ風丸を想っているんだか、彼女の想いはそれこそ海よりも広いのではないだろうか。厚かましいも何も、風丸の恋人は紛れもなく花織だろうに。
「花織先輩ったら……」
「ふふ、この話は一郎太くんには内緒ね」
セットしてくれてありがとう、と微笑みながら花織は白い手袋をした手を口元に当ててシィーという動作をする。そういうさり気無い仕草が今の大人びた容姿とギャップがあって魅力的なのだと思う。
「先に降りてて?すぐに行くから」