第7章 国を背負う選手
青髪の男に微笑んで、少年の前をその小柄な少女は横切って行った。感じたことのない稲妻の走るような衝撃に少年は目を見開く。
振り返った時にシャンデリアの光によって艶めいた美しい黒髪。それに対して図鑑で見たハクチョウと呼ばれる鳥の羽のように白い肌。髪と同じ色の大きな瞳。あれがジャパニーズだというならば、ヤマトナデシコというのだろうか、楚々とした雰囲気を持つ顔立ち。
目が離せなくてその場を立ち去ってゆく少女を目で追いかける。美しいと思った。振り返った時に靡いた黒髪が、表情に湛えた柔らかな微笑みが。今も目に焼き付いている。
「どうした、ウィンディ」
ぽんと肩を叩かれて彼はハッと我に返る。声の主を辿れば己のチームのストライカー、ゴーシュ・フレアがいつものにやりとした表情で彼を見つめている。
「さては可愛い子でも見つけたな」
バン、と指で銃を撃つ動作をする。いつもなら、お前じゃあるまいしと笑って小突くくらいなのに、その言葉が的を射ているから笑えない。
「別に」
素っ気無くそう言って何でもないように肩を竦める。だが心の中では今真正面を過った東洋人のことを考えていた。
でも、もう会うことは無いだろう。
このライオコット島には選手だけではなく何千万人という観客が詰めかけてきている。彼女はきっとそのうちの一人だ。イナズマジャパンの関係者のようだが、ジャパンエリアと彼の国のエリアはかなり距離が離れている。
試合が始まればすぐに忘れてしまうさ。走ることより重要なことなんて、俺にはないんだから。
浅黒い肌にスカイブルーの髪にバンダナを巻いた少年、ウィンディ・ファスタはそう思いながら目を伏せた。