第6章 男女の違い
「花織……、不動貴様……!!」
鬼道は観察眼に優れた男だ。ことに花織と春奈のことにおいては。花織の頬に涙の跡があること、今まで彼女がへたり込んでいたことから何がこの二人の間にあったのかは想像できた。
「ハッ、鬼道クンじゃねーの。こんな時間に夜食は太るぜ?」
あっけらかんとした態度で不動は鬼道を迎える。そんな不動に鬼道は怒り心頭の様子だった。何しろ意中の女とこの合宿所で最も嫌いな男が夜中にふたりきりで、しかも彼女の目には涙のあと。これが彼の心を荒立たせずに済むだろうか。
「お前には関係ない。それより花織から早く離れろ!」
「はあ?何で鬼道クンに指図されないといけないのかねえ」
だがこの状況を不動は逆に面白いと思ったらしい。何しろあの帝国の鬼道が、自分が惚れている女と一緒にいるだけで嫉妬しているのだ。これが面白くないわけがない。不動は花織の肩を抱き寄せて肩をぽんと叩いた。たゆん、と彼女の胸が揺れる。
「花織チャンが寂しいって言うから俺が慰めてやろうとしてただけだぜ。関係ない鬼道クンにどうこう言われる筋合いはねえよ」
「貴様……!!」
鬼道がこぶしを握って怒りに震える声を出した。花織は不動の身体を押して、彼から距離を取る。そして彼を変態、と言いたげな目で睨みつける。不動は肩を竦め、食堂の出口に向かって歩き出す。そしてひらりと手を振って今度は花織にニヤりと笑った。
「じゃあな。また寂しくなったら俺が相手してやるよ。花織チャン」
最後まで不動は鬼道を煽るような言葉を残して食堂を去っていった。ぴしゃん、と扉が閉まる。食堂には花織と行き場のない怒りを抱えた鬼道が取り残された。鬼道さん、と花織が彼の名を呼ぶ前に鬼道は勢いよく花織の顔の横の壁に両手をついた。あまりの剣幕に花織は驚いて目を見開く。