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諸恋

第6章 男女の違い




懇願するような声で花織が呟いた。しばしの沈黙の後、ため息が花織の頭上から聞こえた。それと同時に花織の手の拘束が緩まる。力がすっかり抜けてしまって花織はぺたんとその場に座り込んだ。そして恐る恐る花織が目を開ければ呆れた表情をした不動が花織を見下ろしている。

「ほんと、馬鹿じゃねえの。オマエ」

ぱさりと不動のジャージが花織の肩に掛けられる。着ていろ、ということなのだろうか。花織はきょとんとして不動を見つめる。

「無防備すぎなんだよ、最近の花織チャン。今みたいにヒーローの名前呼んだって来るわけねえだろ。自分の身は自分で守るしかねえんだよ」
「どういう……」

花織が訳が分からずに不動に問いかければ、不動は面倒そうに花織に答えた。

「思わせぶりな行動は、好きな男の前でだけしてろってことだよ」

思わせぶりな行動など、した覚えがないのだが。花織は腑に落ちないといった表情で顔を顰める。ただ不動が自分を心配して忠告をしてくれたのだということは分かった。花織は肩に掛けられたジャージを不動に返す。すると不動は舌打ちをしてそれを受け取った。

「たく、本当に面倒な女。……お前に惚れてる風丸クンや鬼道……」
「不動!!」

びり、とその場が痺れるようなほど厳しい声が食堂に響く。不動はあからさまに嫌そうに顔を顰めて後ろを振り返った。花織はゆっくりと立ち上がってその声の主を確認する。いや、せずとも声で分かった。花織が立ち上がったことで鬼道は花織の存在に気が付いたようだ。益々顔を険しくしてこちらへ歩み寄る。
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