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諸恋

第2章 選ばれた精鋭




「一郎太くんは今円堂君たちと買い物に行ってて……。でも響木監督に呼ばれてるって言ってたから、もう少ししたら来ると思いますよ」
「ふーん、円堂君たちもか……。じゃあ今がチャンスかな」

ぽつりとヒロトが呟いた言葉に花織が首を傾げる。

「チャンス?」
「うん、君に近づくチャンス」

ヒロトは頷く。そして花織に一歩歩み寄った。じっと花織を見つめる穏やかな目が真剣なものになる。ヒロトはさりげなく花織の左手を取る。花織は突然の出来事に動揺し、目を見開いた。

「俺、君のこと諦めてないから」

ヒロトがはっきりと断言する。彼の強い眼差しはそれが嘘ではないのだということを物語っていた。

ジェネシスとの決戦前夜、ヒロトは花織の家を訪れた。自らの父のために自分を捨てる覚悟をするために。彼は花織と密会する中で彼女の芯の強さに惹かれていたのだ。基山ヒロトとしての未練を断ち切るためにあの時花織に想いを告げた。

しかしエイリア学園無き今、彼はもうグランである必要はない。これから彼は基山ヒロトとして生きていける。だからこうして響木監督から連絡を貰い雷門へ来ることになったと決まった時、今まで敵として戦ってきたすべての人と新しく関係を築こうと決めた。円堂たちと、そして今目の前にいる、敵対している頃からも”基山ヒロト”として恋心を抱いたこの少女とも。

「君には随分失礼なことを言ったし、酷いことをした。きっと嫌われても仕方がないと思う。……でも君が許してくれるならまた君と一から関係を築きたい。敵としてじゃなく一人のサッカープレイヤー……、いや友人として」
「ヒロトさん……」

花織はじっとヒロトを見つめる。グランだったころ、特に出会ったばかりのころは、花織は彼のことが嫌いだった。不気味で、急に花織の前に現れては花織を煽るようなことばかり言う人物だったからだ。でも風丸がキャラバンを離脱してしまってからの彼は、落ち込む花織を励まそうともしてくれた。それに真実を知ってしまえばわかる。本当の彼は優しくて聡明で、他人想いの人だ。花織は微笑む、今のこの人とならきちんとした友人関係を築けると。
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