第6章 男女の違い
だから休憩の合間に、特に先日の雑誌の一件を知る者の中で彼女の胸の話をしているやつもいた。
しかもそれだけではない。なぜか今日はいつもに増して彼女の唇が気になった。ぷるんとしている、というか妙な艶めきがあって酷く心を揺さぶられる。所かまわず彼女に口づけてしまいたい、という衝動が風丸の心に浮かぶのは、彼がこの頃彼女に触れることを自制しているからだろうか。
それに彼女の美しい黒髪も、彼女は今日は何故かまとめ上げていて、美しいうなじが晒されていて後姿も何となく大人びている。とにかく今日の花織は色々危ないのだ、男にとって。
中の泥だらけになった水を流してよいしょ、と彼女は立ち上がる。また水を汲みにいかなければならない。傍に置いたバケツを持ちあげる。
「水汲みか?俺がやるよ」
「ううん、大丈夫。一郎太くんは今、休憩中なんだから」
濡れちゃったらいけないしね、と花織が笑う。まあ水の入ったバケツ、というわけでもないし彼女に任せても良いだろう。水を汲んだ後は何があっても自分がバケツを持つ気ではいるが。
水道まで談笑しながらふたりは歩く。蛇口をひねってからも水がバケツに溜まるまでは少し時間がある。彼女との話はいつもと変わらず楽しいが、彼女の女性的な魅力の強さはやはり気になってしまう。堪らなくなって風丸がふいと視線を思わずそらしてしまったその時だった。
「木暮くん!!待ちなさい!!」
春奈の怒号が響く。花織も風丸もきょろきょろとあたりを見回す。おそらくまた木暮が何かしらの悪戯をしたのだろう。ちょろちょろと木暮がこちらへ逃げてくる。春奈も、同じように逃げる木暮を追ってきていた。
「これでもくらえ!!」
木暮は花織たちが水を汲んでいた蛇口に飛びつくと、蛇口の口を塞いで水鉄砲のようにして春奈に水を掛けようとした。
だがそれがいけなかった。
木暮が焦っていたのか、はたまた飛びついたのがいけなかったのか、彼の水鉄砲は標的の元までは飛ばず、あたりかまわず水を飛び散らせる。
「きゃっ」
花織も主に上半身に盛大に水を被ってしまった。冷たい感覚に悲鳴を上げてしまう。ぴったりと服が肌に張り付いてしまって気持ちが悪い感覚に彼女は顔を顰めた。だがこの一件の本当の被害者は風丸だった。