第5章 魅惑の女性
むうっとむくれたようにリカが頬を膨らませる。手足も鍛えている割にはほっそりとしていて、しなやかだ。リカは変えようがない彼女のスタイルに眉間に皺を寄せた。清楚で綺麗で、時に可憐でスポーティさもある。彼女に足りないものなんてあるのだろうか。リカはしばらく黙り込む。だが、はっと何かに気が付いたように目を見開いた。
「これや!!」
「え?きゃっ」
リカは勢いよく花織が抱きしめていた枕を取り上げ、放り投げた。そしてむんずと花織のバストを右手で掴む。花織は咄嗟の出来事に目を白黒させた。
「え、あ、リ、リカちゃん!?」
「アンタ……、ホンマは胸大きいんやったな。でもブラで小さく見せとるんやろ」
「う、うん。……そうだよ、走るのに邪魔になるし」
動揺しながらも花織がリカの問いかけに答える。
「今も付けとるん?その抑えブラ」
「うん」
「毎日か?」
花織はこくこく、と首を縦に振る。リカは眉間に皺を寄せて花織から距離を取った。
「これや……」
「な、なにが」
「花織、アンタに足らんのはセクシーさや」
びしっ、そんな効果音が付きそうな感じでリカが花織を指さす。花織は戸惑い、困り果てたように顔を顰める。ピンと来ていないらしい花織にリカは彼女の両肩を掴んで花織を見据えた。
「あのな花織、男っちゅーんは単純なんや。ちょっといつもと違うかっこするだけでグラッとくるもんやで」
「……」
「胸は女の武器や。しかもアンタの場合身近な女子は誰も持っとらん、しかも中学生男子に効果抜群のサイコーの武器や。それを自ら隠しとってどないするん」
やっぱり、そういうものだろうか。花織は自分の胸に手をやる。自分の胸がコンプレックスだった。走るときにどうしても邪魔で、揺れて痛い。これのせいでタイムに伸び悩んだ時期があった。でもこれで風丸との今の距離感を解消できるなら……。思い悩む花織の腕をリカが引っ張る。そして無理やり花織を立ち上がらせた。
「行くで!花織」
「え?ど、どこに?」
「決まっとるやろ、買い物や!風丸を悩殺できるような下着、買いにいくで!!」