第5章 魅惑の女性
「倦怠期、いうやつや。アンタらには無縁かと思うとったけど有りえへん話やないで」
倦怠期、どんなカップルにでも訪れるというパートナーに対しての飽きや慣れから嫌に感じてしまう状態を指す。付き合った当初のドキドキがなくなり、気持ちが冷めてしまう状況のことを言う。正直、風丸が花織を避けてしまったのはこれとは全く真逆の理由で取り越し苦労もいいところなのだが、リカと花織はそんなことを知る由もない。
「飽きちゃったのかな、私に……」
思えば四六時中一緒にいた。花織はそれが幸せであって、もっともっと傍にいたいと思っているくらいなのに、彼にとってはもしやそれが迷惑だったのだろうか。花織はしゅんと項垂れる。風丸から大切にされている、ということは分かっているけれどもどうしてもこういう時、彼女は弱気になる。それは彼女自身に自信がないからだった。こういうところも、風丸に似ている。花織と風丸は共通点が多い。
「リカちゃん……、どうしたらいいのかな」
助けを求めるような瞳で花織が縋るようにリカを見つめた。リカも本音としては風丸が花織に飽きることなどありえないとすら思っている。キャラバンに乗っていた時は花織に触れる全てのものに嫉妬していそうな印象を持っていた。今でこそそれは和らいでいるようだが、これだけ熱愛であっても花織を狙っている男は多い。気が休まることなどないだろうに。……でもこのまま、こんなに自分を頼りにしてくれる花織を放っておくことができようか。答えは否だ。
「刺激や……」
ぽつりとリカが呟く。花織は首を傾げた。
「え?」
「もしこれがホンマに倦怠期なんやったら、なんか刺激が必要や!イメチェンするで!花織!」
「い、イメチェン?」
花織が困惑したように顔を顰める。リカはせや、と言い真剣に悩むような表情でじいっと花織の頭のてっぺんからつま先までを観察する。舐めるような視線に花織は枕を抱えて縮こまった。
「黒髪は、アンタのチャームポイントやからそのままでええ。で白い肌も黒髪にマッチしとる。顔も悪ない。……ていうかアンタようみるとホンマに美人やな」