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諸恋

第5章 魅惑の女性





「一郎太くん……」

私が嫌われるような何かをしてしまったのだろうか。まず考えたのはそれだった。なぜなら風丸が花織に対してこういう態度を取るときは本気で花織を遠ざけたいときだけなのだから。閉ざされた扉を見つめて大きな瞳が揺らいだ。今朝も、今日の練習もいつも通りに接していたはずなのに。

「なあにしてんの、花織チャンよお」

呆然と立ち尽くしている花織を呼んだ のは普段、花織にもチームメイトにも関わろうとしない不動明王だった。いやらしくにやついた表情で、花織をじろじろと見ている。どうやら今の一連の流れを見ていたようだ。

「何、風丸クンに拒絶されて泣いてるワケ?よっぽど好きみてえだな、彼氏様のことがさ」
「……っ」

潤んだ瞳を不動から逸らして花織は俯く。事実であるから何も言えなかった。風丸に拒絶されたことが胸に響いている。それだけ彼のことが好きなのも事実だ。黙り込んでいる花織の肩を不動は強引に抱き寄せる。驚く間もなく、彼は花織に低く囁いた。

「ま、風丸クンは違うみたいだけどなあ?そりゃ日夜ずっと一緒にいりゃ、飽きも来るだろうよ」

意地の悪い言葉、彼はそういってにやつきながら ぽんと花織の肩を叩いて自室へ戻っていった。普段なら気にも留めない不動の嫌味な言動が、今の花織の心には重くのしかかっていた。”飽き”その言葉がとても怖かった。不動の言う通り、風丸は自分といることに飽きてしまったのかもしれない。

「……」

どうしよう。とぼとぼと部屋へ戻りながら花織は思う。今日は勝手に練習をする気にもなれなかった。ぐるぐると頭の中で風丸に拒絶された瞬間と、不動の言葉が回る。布団に潜り込んでも彼女の不安は治まらず、堪らなくなって花織はこういう方面で頼りになるであろう親友にメールを打ち込んだ。
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