第5章 魅惑の女性
可愛らしく守ってあげたい女の子をそのまま表したような美少女の冬花。きっと幼少期も可愛かったに違いない。もしも彼女が風丸の初恋の人だったら、なんて僅かな可能性を考えてしまうと酷くモヤモヤした。その感情をぶつけたくなかったから、花織はうまく冬花と接することができないのだ。
花織の大きな欠点、それはとても嫉妬深いところだ。必死に必死に包み隠そうとするが、本当は何においても一番でありたかった。今はそれが風丸にとっての一番で、風丸にとって相応しい一番の人間でありたいと願っている。これは風丸と似ているところでもあった。
「お、おい!どうしたんだよ、フユッペ!」
「……?」
花織は彼女の名前を呼んだその声に洗濯物をつかみ損ねる。今のはキャプテンの声だ。彼の姿を探してきょろきょろとあたりを見回す。すると校門の方に円堂と手を繋いで、いや円堂の腕 を引っ張って校外へ出ていく冬花の姿が見えた。
「冬花さん……」
二人してお出かけだろうか。手を繋いで、なんてまるで恋人同士みたい。
「……」
花織は自分の服の胸元をぎゅっと握りしめる。今見た光景で溜飲が下がりそうになった自分がとても嫌な人間に思えた。自分は友人である秋の想いを知っていて、それを応援している立場なのに。少なからず今は、おそらく彼女が風丸を好きなわけではないのだと安堵してしまった。
洗濯籠から青いユニフォームを取り出す。彼の色、背番号は二番。彼のユニフォーム。脱水はしたものの、まだ湿り気の残るそれを胸の中でぎゅっと抱きしめる。
嫌われるかな、こんな自分を知られたら。
私より魅力的な人なんてきっと一杯いるから。胸の中にいつも抱いている不安をまた仕舞い込んで、花織はユニフォームの皺を伸ばす。考えなければいい、胸の中に仕舞っていれば誰にも気づかれないはずだ。