第5章 魅惑の女性
そう言って彼女は風丸の臀部に触れた。掌で仙骨と大転子の間を揺らすように解していく。体重を上手く掛けて、風丸にとって最適の圧を掛けてくれている。気持ち良い、のだが風丸はそれどころではなかった。
「……ん、ん」
マッサージをしている彼女の吐息があまりにも官能的なのだ。マッサージをする側は結構力がいる。彼女は全身を使って風丸に奉仕してくれているわけなのだから、吐息の一つや二つ漏れても仕方ない。いつもの風丸なら気にしないでいられた。むしろ自分のために頑張ってくれる彼女を微笑ましくさえ思えたかもしれない。
でも今は。
彼女が漏らす吐息一つ一つが、あの雑誌に掲載されていた行為を連想させる。自分が彼女にそういうことをさせている気分になってしまう。
「一郎太くんっ……」
心なしか切なげに聞こえる彼女の声、息を切らして僅かに息をこらえて。風丸はぞくりと走る衝動を堪える、どくどくと拍動する心臓。まるで血が体中をめぐる感覚まで感じられて全身が熱くて堪らない。
「ねえ……、気持ちいい?」
劣情を煽るような吐息交じりの声で囁かれた声は、あまりにも風丸を刺激した。
「花織、ストップ」
限界は近かった。風丸は今にも花織に飛びかかりそうな衝動と荒くなりそうな息をこらえて花織を止める。顔を真っ赤にしてゆっくりと起き上がる。そして少しだけ花織と距離を取った。
「悪い、今晩中にやらないといけないことを思い出した。……そ、そうだ、鬼道から風神の舞を使った戦術についての案を出してくれって言われてて」
このまま花織と一緒にいると花織を傷つけかねない。そう判断した風丸は咄嗟にありもしない嘘をつく。鬼道の名前を出してしまったのは食堂を出るときに鬼道が呟いた言葉を思い出したからだった。
”花織に妙な真似をしたら、どうなるかわかっているな?”