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【YOI・男主&勇ヴィク】貴方の、『a』のみの愛。

第3章 『a』という名の、喜怒愛落。


1月下旬。
無事大学院の修士論文が認められた純は、残り少ない学生生活を過ごしながら、元コーチの藤枝や振付師の宮永と今後についての話し合いを、そして勇利は長谷津のリンクで、2月に開催される四大陸選手権に向けての調整を行っていた。
ヴィクトルとは密に電話やメール等でやり取りを続けているが、この頃ビデオ通話をする度に、ヴィクトルの目元が赤くなっている事が多いのが、勇利は気になっていた。
理由を尋ねても「何でもないよ」「ホントに心配いらないから」と返されるだけで、しかし、彼の赤く腫れた目を除いては至って普通だったので、勇利はそれ以上追求しない事にした。

そして、ヴィクトル達がユーロ選手権に出発する際、
「楽しみにしててね。皆を、そして何よりも一番『勇利達』を、驚かせてみせるから」
というヴィクトルからのメッセージに、勇利は「頑張って」と返信した後で小首を傾げた。
「ん?勇利『達』?…」
勇利の脳裏に疑問符が浮かんだが、いざ競技が始まると出場選手達何よりヴィクトルの美しさと力強さに引き込まれてしまう事で、失念してしまった。
結果はヴィクトルと、元々ワールドにピークを合わせていたのに加えて、友人の競技復帰にモチベーションが上がったクリストフ・ジャコメッティの2人が、見事表彰台の上でワンツーフィニッシュを飾った。

出場選手達によるEX中継の始まる時間に合わせて、勇利が自室のPCをセットしていると、何とユーリから『今、電話してもいいか?』とLINEが届いた。
「珍しいね、ユリオが僕に電話なんて」
『カツ丼?俺からかけるって言ったじゃねえかよ!』
「ユリオもお疲れ様。惜しかったけど、最終決戦はワールドだからね」
『…フン。判ってんだよンな事は』
GPF終了以降、ユーリは連戦の疲労の他成長痛にも悩まされるようになり、今回のユーロは惜しくも台乗りを逃していた。
『俺自身の為にも言っとく。…俺は何度も止めたからな』
「え?」
『そんだけ。じゃあな』
言いたい事だけ言って切れてから間髪入れず、今度は純から「夜中にゴメン。あのデコからメッセージ来た。『今度は俺の番だよ』やて。何か嫌な予感するんやけど」とLINEが届き、何なんだろうと思っている内に、EXの中継が始まる。
やがて。
真夜中の長谷津と京都から、2種類の『a』という絶叫が轟いた。
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