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【YOI・男主&勇ヴィク】貴方の、『a』のみの愛。

第3章 『a』という名の、喜怒愛落。


純が京都に戻った翌日、ヴィクトルとユーリもこれ以上ヤコフの雷が落ちる前に、ロシアへ帰国した。
「ユーロが終わったら、すぐまた勇利の所へ戻ってくるよ。四大陸が済み次第、今度こそ一緒にロシアへ行こうね」
「四大陸も気合い入れてけよカツ丼。ジャパンナショナルの時みたく、演技中に泣くんじゃねえぞ」
「あ!勇利、四大陸ではもうEX変えちゃダメだからね?」
「ヴィクトルもユリオも、ひょっとしてロシアナショナル中もずっと僕の事観てたの?」
「だって、俺は勇利のコーチだし」
「ずっとじゃねえよ!俺は…あのEXは、ニッポンジンらしくて悪くねぇと思ったぞ」
全日本選手権のEXで、勇利が踊った純のプログラムは、思いの外スケオタやファンからも好評で、それが余計にヴィクトルは面白くないのだ。
「ユリオは、あのジャパネスクな勇利にすっかり夢中になってたもんね」
「ばっ、ちげーよ!」
顔を真っ赤にして反論するユーリとふくれっ面のヴィクトルを見比べた勇利は、「あれは1回限りの特別だったから」と返した。
次いで、一見いつもと変わらぬ様子のヴィクトルを眺めながら、昨夜の事を脳裏に思い浮かべる。

純から許可を貰った勇利の歌を寝室で聴いていたヴィクトルが、突如勇利の自室に押し入ってきたかと思いきや、その美しい双眸に涙を溢れさせながら勇利に抱き付いてきた。
「何かあったの?」「ひょっとして歌、気に入らなかった?」と慌てふためきながら問い掛ける勇利に、ヴィクトルは何度も首を横に振り続け、やがて愛しい人の心音と体温、そして嗚咽と涙に理性を保てなくなった2人は、そのまま熱い一夜を共にしたのである。
今朝も時間ギリギリまで、ヴィクトルは勇利の胸に顔を埋めて離れなかった。
「離れずにそばにいて…か。僕もだけど。少しは自惚れてもいいのかな」
「…うん、そうだよ」
「起きてたの?」
独り言のつもりが自分の腕の中で身じろいだ恋人に、勇利は仄かに顔を赤くさせた。
泣き過ぎてやや腫れぼったくなっている瞳を細めると、ヴィクトルは顔を上げて勇利にキスをする。
「本当に嬉しかったよ。あの歌には、勇利の愛が一杯込められてたから、涙が止まらなくて」
「そんな、大げさだよ。でも、良かった」
「…何とかユーロまでには慣れておかないと」

その時の勇利には、ヴィクトルの微かな呟きが聞こえなかった。
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