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【YOI・男主&勇ヴィク】貴方の、『a』のみの愛。

第2章 始まりは、『a』。


「ホンマにすみません。冬休み中やってのに、連チャンでスタジオ使わせて貰うて」
「いいのよ、あの上林純をこんな間近で見られるなんて、ラッキーだわ。何しろアタシ、全日本選手権観に行けなかったから…あ~~!勇利の優勝だけじゃなく、上林純現役最後の試合だったのにいいぃ!!」
「インフルエンザだったんだから、仕方ないじゃない。どうせ、TVで観てたんでしょ?」
「TVと会場のライブ感は、大違いよぉ!」
勇利と純は、ミナコに言ってバレエ教室を開けて貰い、そこで先日の発表会と同じく曲の練習と録音をする事にした。
手早くタブレットから目的の物を読み出した純は、音源を勇利のスマホに送ると、タブレット内の楽譜の編集ソフトを起動させた。
「一応、この曲は男性女性どっち向けにも構成されとるんやけど、男性にはちょっと高いから、勇利の歌い易い音域を教えてくれるか?」
ピアノを叩きながら、勇利の声質に無理のない音域を確認した後、慣れた手付きで楽譜を作成すると、スタジオのプリンターから印刷する。
「さあ、レッスン始めよか♪」
まるで音楽の授業のようなお約束の和音を奏でながら、純は楽譜を手にする勇利を見た。
「何か僕、スケートより歌の練習ばっかしてるような気がする…」
「これでお終いやから、辛抱し。どうせなら、あのヴィクトルが滑るトコ想像しながら歌うたらええやん」
「僕、そんなに歌は得意じゃないから」
「充分上手いで。それに、ヴィクトルは単に上手な歌が欲しいんと違う」
「何それ」
「…さあ。後は、自分で考え」

きっとあの傍若無人でヤキモチ妬きな皇帝は、愛する男の歌声に包まれながら、銀盤の上を踊りたいのだ。
自らが決めた選択とはいえ、おそらく想像以上に勇利と離れる事が堪えていたのかも知れない。
そして純の存在と、彼によって引き出された勇利の新たな才能と魅力を目の当たりにして、居ても立ってもいられなくなったのだろう。
あの夜、互いの立場も何もかも忘れて取っ組み合いをした後、つくづく勝生勇利が罪な男であるというのを共に再確認した純は、これから先彼らと関わり続けていく事に対する達観にも近いようなものを覚えると、努めて感情を殺しながら伴奏に集中した。
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