• テキストサイズ

【YOI・男主&勇ヴィク】貴方の、『a』のみの愛。

第2章 始まりは、『a』。


期待してるよ、とヴィクトルがユーリを連れて買い物に出掛けた後、勇利と純は果たしてどんな歌が良いのか考えあぐねていた。
「うーん、あのデコにお約束な歌は合わんやろうなあ。きっと、定番モノは昔から競技やアイスショーでもやってきた筈やし」
「オペラアリアなんて、僕にはハードル爆高だよ?」
「判っとる。それに君らの『離れずにそばにいて』がインパクトあり過ぎやから、とっくに候補から外しとるわ」
「え?アレはヴィクトルの…」
「今ではもう『ヴィクトル・ニキフォロフと勝生勇利の』や」

そう言われて勇利は頬を染めたが、自分のタブレットに入った音楽関連のファイルのリストとにらめっこしている純を見て我に返る。
「ロシア民謡とかどうかな?原点回帰というか、シンプル・イズ・ベストというか」
「悪い線やないけど、それも定番モノはやっとると思うし、ロシア民謡は時代背景的に大衆音楽や愛国唱歌の側面も強いから、プログラムに使うのは難しいで」
「そっかあ。でも、ヴィクトルは当たり前だけどロシアそのものってイメージだよね。トップアスリートにして至高の芸術家でもある、みたいな」
「惚気かいな。…ん?ちょっと待って。芸術家…ロシアの……」
勇利の言葉に何かに思い当たったような顔をした純は、暫し手元のタブレットを動かしていたが、やがて顔を上げると言葉を続けた。
「有難う。勇利のお蔭でええのを思い出したわ。まさにある意味、ヴィクトルにとっても正当王道かも知れへん」
「え?何?」
「コレ」
純が見せてきたタブレットには、何処か気難しそうなロシア男性の画像が映っていた。
彼の名前を確認した勇利は、思わず「あっ」と声を上げる。
「そう。僕らや先輩らをはじめ、世界中のスケーターから愛された曲を作った人や」
「この人って、歌の曲も作ってたの?」
「ん。ピアノコンチェルトのイメージ強いけど、こっちも名曲なんやで?」
音楽が好きで自身もピアノが趣味である純は、口元に笑みを浮かべながら音楽ギャラリーから件の曲を呼び出した。
「これなら、あのデコも文句言わへんやろ」
「あ、大事な事忘れてた!僕、ロシア語の歌詞は」
「大丈夫。これはタイトル通り『ヴォカリーズ』やから、母音の『a』だけでええねん」
言いながら、純は右頬だけ笑窪を作った。
/ 12ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp