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【YOI・男主&勇ヴィク】貴方の、『a』のみの愛。

第1章 貴方の、我侭。


「割引はノーサンキュー!出世払いだけどちゃんとします!純もヴィクトルとつるんで、僕の暗黒歴史を晒そうとするのはやめてよ!」
「元々ヴィクトルは勇利の歌を所望しとるんやろ?それを、自分だけ蚊帳の外におるような舐めた真似しとったら、即この画像渡すからな」
「純!」
「今の僕らは、一蓮托生や。勇利がやるんやったら、僕はスケート同様なんぼでも協力するで」
タブレットを抱えながら見つめてきた純に、勇利は言葉をつまらせる。
「おぅ、『デコ露助』」
「俺を臆面もなくそんな風に呼ぶのは、君だけだよ。何?」
ヴィクトルが来日した夜中、露天風呂で取っ組み合いの喧嘩をして以来、純と彼との間には、勇利を巡る友情とも違った奇妙な絆が生まれていた。
「僕らは音楽のプロと違う。せやから、あくまで遊びの範疇に留めてくれ」
「君、ピアノ結構上手いじゃない」
「僕の演奏は『普通の人にしては上手』止まりや。ええな?」
「…判ったよ。競技には使わないって約束する」
「当然や。んで、どんな曲がええねん?」
純にそう尋ねられたヴィクトルは、暫し片手を顎の傍に置いて何か考えるような仕草をしていたが、
「君も勇利も音楽のセンスは悪くなさそうだし、選曲は任せるよ」
という何とも肩透かしな返事に、純の片眉が不機嫌そうにつり上がった。
「ほんなら、ジュニアの礼之くんもやりたがっとった『フィンランディア』にするか?勇利も中学生位に音楽の授業で習った事あるやろし、ええ歌やで?」
「ワーオ♪そんなに俺の事、亡命させたいの?」
帝国の圧政から祖国の独立を歌った『フィンランディア』が、当時ロシアから演奏禁止を言い渡された話は有名である。
「あんたなら、何処の国でも引く手あまたやろ?でも億が一そうなったとしても、亡命先に日本だけは選ばんといてな」
辛辣に言い放つと、純はタブレットのフォルダにロックをかけ直し、困惑気味に眉を下げたままの勇利に近付く。
「流石のあいつも、勇利の競技に支障が出る程無茶は言うてきいひんやろ。嫌な事はとっとと済ませるに限るで」
「判ったよ。…はあ、今年は最後の最後まで色々有り過ぎだよ」
「諦め。それが、勝生勇利の宿命や」
ぼやく勇利に、純は伏し目がちに返した。
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