第12章 気持ち
「はーっ、死ぬかと思った」
「ごめん、つい?」
「酷いさあんな。ユウの時もそうやって逃げれば良かったのに」
「あの時は体が動かなかったというか…目が離せなかったというか…」
確かにこうしてれば逃げれただろうし神田なら本当に嫌がることはしない筈だ。
どうしてあの時逃げれなかった…、いや逃げなかったのか…。
ラビの時とはまた少し違った感覚で自分でも驚いていた。
「私…あの時嫌じゃなかったってこと?」
「オレに聞かれても分かんないさ」
「んー…難しいなあ…」
「ま、恋愛初心者のあんながいきなり全部理解するのは無理な話さ」
「おっしゃる通りです…」
「少しずつ理解してけばいいんじゃねーの?」
「ラビすごい!恋愛マスターって呼んでいい?」
「それは辞めるさ」
ラビのおかげで少しだけモヤが取れたような気がした。
普段からラビは女の人に対して「ストライク」だなんだとか言って目をハートにしている。
「さすがラビ…女慣れしてるだけあるね」
「え、ちょっと何か語弊があるさ」
「また何かあったら話聞いてねラビ!」
それじゃ気分転換に体でも動かしてくるね~と行ってしまうあんな。
一人残ったラビは深いため息をつく。
「あー…ドキドキしたさ…」
あんなは何か勘違いをしていたようだが本当は自分も恋愛初心者なのだ。
ただ、人を観察するのが得意なだけなのである。
だから壁ドンなんて慣れているはずもなく実は内心ドキドキのラビだった。
(慣れない事はするもんじゃないさ…)