第11章 優しい守り番
「花嫁様、末永くお幸せに」
そう言ってニコニコと笑い掛ける彼らに若干の苛立ちを覚える。
あの後、無理やり着せられた花嫁衣裳に身を包み彼らに送り出されている所だ。
「すごく似合ってますよ」
「…うぅ…早く着替えたい恥ずかしい…」
無駄にヒラヒラとした装飾が施され心なしか露出が多い気がする。
アレンが褒めてくれるも何とも複雑な気持ちだった。
「この衣装なら山の神もさぞ喜んでくれることでしょう。心なしか胸元が寂しい気もしますが…」
「おいっ!どういう意味だ!」
「ほっほっ、冗談です」
この老人失礼な事言ってきやがったよ!花嫁様だぞ!
もっと丁重に扱ってくれ…私の心はズタボロだよ…。
「はぁ……。それじゃそろそろ行きます…。もう二度と供物は寄越さないでくださいね」
分かっているとは思うが最後に釘を刺しておく。
もう二度と同じことが起こらないように。
「えぇ、勿論です。花嫁様に嫉妬されたら敵いませんので」
いや、そうじゃない!と思ったが最早突っ込む気力すらわかない。
「そういえば起きてから神田見てないんだけど…」
「僕も見てないですね。その辺で散歩でもしてるんじゃないですか?」
「んー…。とりあえず私ウィルの所に行ってるから後から来て?」
「分かりました」
「神田かティムに案内してもらってね!アレンってばすぐ迷子になるんだから」
昨日の神田の様子といい、アレンの迷子といい色々不安はあったが一足先に私だけウィルの元へ向かう事にした。