第11章 優しい守り番
「さ、神田の元へ戻ろう?」
「あぁ」
「そうですね」
無事にAKUMAを破壊し私たちは泉へと戻った。
戻る最中アレンにここまでのいきさつを話すと心底驚いた顔をしていた。
「まさか、こんな所にイノセンスがあったなんて…」
「ほんと、汽車が止まったのは不幸中の幸いだったね」
たまたま落石事故が無ければスルーしていたであろう土地だったため今回の件はツイてるなと思った。
泉に戻るとイノセンスを手にした神田が立っていた。
どこかボーっとしているようにも見え心配で駆け寄る。
「神田?どうしたの?」
私は神田の腕を掴もうとするもバッと振り払われる。
神田の行動に思わず固まってしまう。
「…お前か」
「え、何それ、酷い」
一瞬こっちを見る目が私を映していないような感じがして怖かった。
何か考え事でもしていたのだろうか?
「そっちは終わったのか?」
「うん。AKUMAだった。神田も回収できたんだね」
「あぁ」
すぐにいつも通りの神田に戻るも先ほどの神田の様子が頭から離れなかった。
「本当にただの泉なってしまったんだな…」
神田に気を取られていたが、気付けばウィルは泉の淵にしゃがみこんでいた。
「いざ、こうなると少し寂しいものだな…」
「ウィル…」
やはりここの泉の不思議な力はイノセンスの影響だったらしい。
こうなると予測していたとはいえ彼の表情に罪悪感を覚えた。
「お前たちはあとどれくらいここにいるんだ?」
「…長くても2日かな。汽車さえ出れば明日にでも出ると思う」
元々予定にはなかった滞在だ。イノセンスも回収した今、ここにいる意味はない。
「一旦村に戻りましょう」
「あ、うん。そうだね。それじゃ、ウィルまた明日来るね」
「…あぁ」
寂しそうに泉を見つめる彼が気になったが私たちは一旦村に戻ることにした。