第11章 優しい守り番
「ふう。とりあえずイノセンスを見つけたけど…」
「あれがイノセンス…」
すぐには回収せず一旦岸へと上がる。
「イノセンスが見つかった以上、私はあれを回収しないといけない」
「あぁ…」
先ほどまでの和やかな雰囲気とは打って変わり私が真面目な顔つきになると、彼も何かを察した様でピリッとした空気に変わる。
「イノセンスはまだ未知の物だから何が起こるか分からないの。ただ、一つだけ言えるのはこの泉はきっとただの泉に戻ると思う…」
先ほど話していなかったことを彼に伝える。
そう、私が今からすることは彼が…彼らが守り続けて来た物を奪う事を意味する。
「後だしでこんなこと言われても困っちゃうよね。ごめんね。でも…」
「別にいい。もう一族は俺しか残っていない。守り続けるには限界があった」
落ち込んでいるのだろうか?うつむいたままで顔の表情は読み取れない。
彼の様子を確かめようと顔を覗き込んだ時だった。
「きゃっ!」
パッと顔を上げたかと思えばそのまま押し倒される。
私の目に映るのは彼の綺麗な翡翠色の瞳と夜空だ。
「ウィル…?」
「お前が嫁としてここに残ってくれれば問題はないんだがな」
「…はい?」
聞き間違いだろうか?嫁…?
落ち込んでるかと思えばニコニコと笑顔でこちらを見下ろしている。
「ここで一緒に暮らせばいい」
寂しそうな瞳から目が離せなかった。
どれくらいの間ここに一人でいたのだろう?彼はこれからもずっと一人なのだろうか?そう思うと突き放すことが出来なかった。
「ウィル…」
ゆくりと彼の顔が近づいてくる。
その時だった。
「そいつから離れろ」
殺気を含んだ聞きなれた声が聞こえた。