第11章 優しい守り番
「ねえ、さっき人間って言ってたけど、なんで山の神なんて呼ばれてるの?」
「数百年前の俺の祖先は本当にここの山の神だったんだ。と言っても人間と結ばれてその血は段々と薄れていったけどな。だから俺はほぼ人間、だな」
「へぇ。神様も人を好きになったりするんだね」
「突っ込む所そこかよ」
大体の事情は分かった。血は薄れたと言っても彼には少なからずその山の神の血が流れている。
だからここで代々ずっと守って来たんだ。
「偉いねー」
「はっ?」
「いや、ずっとこの土地を守って来たんでしょ?すごいなぁって思って」
「生まれてからずっとそうだからな。俺はそうする事しか知らない」
そう言ってどこか寂しそうに笑う彼。
「他の人はいないの?」
「…あぁ。今じゃ一族は俺一人だ」
「そう、なんだ…」
「跡継ぎを生むにも、ここに居るせいか相手なんぞいないからな」
「山の神かわいそー」
確かにずっとこんな所に居たら出会いなんてないもんね。
そもそもここに来る人なんて生贄になった人くらいだろうし。
「おまっ、そこはフォローするところだろう…」
「あぁ、ごめんごめん」
「大体お前はすんなりと俺の話を飲み込んでるようだが疑ったりしないのか?」
「嘘だったらその時はその時かな」
この手の話は長い事エクソシストをやっていれば日常茶飯事だ。
だから神様の子孫がいても不思議ではなかったし、特に疑う事もしなかった。