第11章 優しい守り番
「…で、お前はこの村に何しに来たんだ?」
「あー…実は帰る途中でトラブっちゃって…たまたま立ち寄っただけなんだけど…」
「この村について何か知っているか?」
「んー…、そういえば村の人が魔物が出るって言ってた。それから守ってくれるのが山の神だって」
「……」
「あとは何も知らないかな」
彼は私の事を確かめるようにジッとこちらを見ている。
まだ何か疑っているような…そんな目をしていた。
「なにをそんなに警戒してるの?この村ってバレたらマズイ事でもあるの?」
いつまで経っても埒が明かないと思った私は素直に聞いてみる。
「お前は…怖くないのか?」
「何が?」
「突然攫われて、生贄としてこの場に放り込まれ、今お前の前には山の神と名乗る男がいる」
「それが何?生贄になるつもりもないし、仮に貴方が私の事殺そうとしても私は負けるつもりなんてないよ?」
少し挑発的に煽ってみれば、彼は驚いたようでぽかんとしていた。
「試しに戦ってみる?」
「ぷっ…あははっ…!」
「ちょっ、何笑ってんの!本当に強いんだよ?私!」
「あー…腹いてぇっ。お前変な奴だな。普通そこは怯える所だろ?ほんとに女かよ」
「なんだとこの野郎。この可愛らしい姿が見えんのか!どっからどう見ても女でしょっ」
失礼な奴だ。私の繊細な乙女心は傷ついたぞ。
山の神だろうが何だろうが許さん!
「あー、悪い悪い。人と話すのが久しぶりでな、ついからかってしまった」
「なっ!私で遊んでたのね!もう知らないっ」
「そう怒るなって。折角の可愛い顔が台無しだぞ?冗談だから機嫌を直せ」
そう言って笑う彼の顔は先ほどまでの警戒していた様子はなく、一人の青年としてそこにいた。