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大切な物【D.Gray-man】

第11章 優しい守り番



「ふっ。捧げもののくせに元気だな」


警戒していた雰囲気が解かれ優しいものに変わる。



「すまんな。手当をしてやろう」


そう言って押さえつけていた手を離し私を立ち上がらせてくれた。


「ありがとう。でも大して怪我じゃないから大丈夫だよ?」

「遠慮するな。中に入れ」


半ば強引に部屋の中に押し込まれ椅子に座らされる。



「腕を出せ。後、足もな」


どうやら先ほどの縄の痕に気付いたらしくそこも手当してくれるらしい。
大した怪我ではなかったが彼の行為に甘えることにした。




「…少し沁みるかもしれんが我慢してくれ」

「大丈夫大丈夫!」



棚から小瓶を出して薬のような物を塗り付けてくれる。
沁みるわけでもなく、とくに痛みは感じなかった。



「…ん?」

「驚いたか?」

「いや…、えっ?…」


思わず驚いて口が開いてしまう。
何故なら薬を塗った先からみるみると傷が癒えていったのだ。



「傷が…治った…?」

「俺が調合した薬だからな、それ位の傷ならすぐに治る」

「すごい!手当てしてくれてありがとう。あなた薬師なの?」

「いや、違う。俺は…山の神、と呼ばれている者だ」




そう言いながらずっと付けていたお面をスッと外しこちらに向き直る。
面の下には綺麗な翡翠色の髪の毛に、髪と同じ色をした瞳があった。


「…綺麗」



思わず口から零れ出る。
その美しさはまるで神様のようで…って、神様…え?今この人なんて…



「待って…今、山の神って言った?」

「あぁ。俺が山の神だ」

「それじゃ…手当てしたのってまさか…」



傷だらけの体じゃ不味いから、あえて手当てして綺麗な状態で食ってやろう的な感じなのでは…?
サーッと顔が青ざめていくのを感じた。




「おい、待て待て、落ち着け。変な事考えてるだろ?俺は別にお前を取って食ったりしないぞ」

「…嘘だ!そうやって油断させてパクリといっちゃうんでしょ?そんなのお約束展開過ぎてバレバレだよ!」

「はぁっ…。俺は普通の人間だ。人間が人間なんて食うわけないだろっ」



山の神は大きくため息をつきながら私とは少し離れた椅子にドカッと座る。

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