第11章 優しい守り番
「いや…縄ほどいてってよ…」
あれから私は村人に連れられて山の奥にある洞窟の中へと放り込まれた。
倒す、って言ったんだからせめて縄くらい解いてってもいいのでは?と思ったが、どうせ私からしたらこんな縄どうってことない。
「あー…跡残っちゃってる」
仕方なくイノセンスを発動させ縄を解くも、私の手首と足首にはくっきりと赤い跡が残っていた。
ひとまず辺りを探ってみようと歩き始めるも何かに引っかかり転んでしまう。
いきなり出鼻を挫かれ既に心が折れそうだったが、足元を確認する。
「はぁっ…、って、これ…」
私の足元には…骨があった。
よく見ればそこらじゅうに骨が散らばっている。
生贄となった者たちの物だろう。小さい物から大きい物まで様々だ。
だがしかし、違和感を感じる。
「なんでバラバラなの?」
身動きが取れず息絶えて白骨化してしまったなら、そのままの状態の筈だ。
だがここにある骨はあちこちに散らばっていた。
獣の仕業だろうか?それならば合点がいくが…何かがいることは間違いなさそうだった。
私は警戒しながら奥へと進んでいった。
暫く奥へと歩みを進めていると薄っすらと光が漏れている場所があった。
ゆっくりとその光に近付いてみる。
すると…
「…部屋?」
洞窟の中だというのに部屋のようなものがそこにはあった。
隙間からこっそり中を見れば人が生活していたような形跡が見える。
もう少し中の様子が見たくて身を乗り出そうとした時だった。
「きゃっ、な、何っ!?」
突然背後から手首を掴まれ地面に抑え込まれてしまう。
首だけ動かし振り返ると、そこには面を付けた人がいた。
「…お前ッ…!…村の物じゃないな?」
「そう、ですね…痛いので離してもらえます?」
先ほど縛られて痛めていた手首を掴まれ二重の意味で痛いのだ。
出来ることなら早く手を離して欲しい。
「何しに来た!?」
しかし、その人は手を緩めるどころか握る力をさらに強める。
「痛い痛いっ!待って!私、山の神の供物として連れて来られただけなんだけどっ?」
「……」
お面越しにジッとこちらを見て何か考えているように見えた。
間違った事は言ってない筈だ…と若干心配になる。