第11章 優しい守り番
「はぁ…要は生贄ってことね」
「随分落ち着いてるのう」
恐らく彼らは人間だろう。普通の人間相手に負けるわけがない。
それに山の神って言ってもどうせイノシシとかクマとかじゃないの?
「山の神に供物を捧げてどうするの?」
「この村には昔から魔物が住んでおってな。我らが生贄を捧げる代わりに山の神が守ってくれてるのじゃ」
本気でそんな事を思っているのだろうか?
閉鎖的な村は昔からの風習を重んじるのが良くも悪くも大変だ。
「いいよ。生贄になってあげる」
「フンッ。そうやって油断させて逃げるつもりじゃろう?」
「逃げないって!ただ…私が山の神…食べちゃったらごめんね」
そう言うとその場が静まり返る。そしてすぐにドッと笑い声が響き渡る。
「あはははっ、お嬢ちゃんそれはすげーな」
「こいつ頭ぶっ飛んでやがる」
「恐怖でどうにかなっちまったんじゃねえのか」
馬鹿にしたような言葉と視線が向けられるも大して気にならなかった。
「それじゃあ、こうしよう。私が魔物も山の神も倒してあげるよ、そしたらこんな生贄なんて必要ないでしょ?」
どうせ私が逃げた所で別の誰かが犠牲になるのだろう。
それならば、そんな風習は根源から叩き潰してしまえばいいのだ。
「ふん、戯言をっ!だが、よかろう。本当にそんな事が出来るのならな」
「約束ね」
「もし、ダメだった場合お前さんの仲間も供物として捧げさしてもらう」
「分かった。それでいいよ」
こうして変な事に巻き込まれてしまったわけだが、少しだけワクワクしていた。
(神様ってホントにいるのかな…?)