第10章 海の魔物
「もう少ししたら海流が強くなってくるはずよ」
「詳しいんですね~」
ジェシーが出してくれた船に乗りアレンとジェシーは楽しそうに会話をしている。
一方、私と神田は二人とは真逆で黙ったきりだ。
「あ、あの二人楽しそうだね」
「……」
「それにしても特に変わった所はなさそうだね」
「…あぁ」
彼に話しかけるもいつものように眉間に皺を寄せ腕を組み立っている。
いつも通りと言えばいつも通りなのだろうが、心なしかいつも以上に愛想が無いようも見えた。
思い切ってこの間の事を聞いてみることにした。
「あのさ…この間神田の部屋にいた時の事なんだけど…」
そう言いかけると神田の体が微かだがビクッとなるのが見えた。
「夢…じゃなかったんだね…」
「……」
「…あの時はごめんね。助けてくれてありがとう」
きっと私が気にすると思って黙っていてくれたのだろう。
ま、ラビのせいであっさりバレちゃったけど…。
「あれからずっと会えてなかったからさ、お礼もちゃんと言えてなかったし」
「もう体はいいのか?」
「うん!平気!あの後コムイさんボコボコにしてやった」
「…次はねぇぞ」
いつも通りの神田にほっとする。そして私はふとあの時の事を思い出した。
「ねえ!そういえばあの時組手で勝った方の言う事聞くって覚えてる?」
「もう聞いてやっただろ」
「え?まだ何も言ってないけど?」
「あの時、ここから逃げろって言ったじゃねえか」
そういえばそんな事も言ったな…と記憶を探る。
「えー…ずるい」
「約束は約束だろ。お前の言う事聞いてやったんだ」
本当はあの時、神田にも同じ目に合わせようと思って女装してもらおうと企んでいたのだ。
顔が整っているため似合うのは間違いない。
そんな恰好をして嫌がる神田の姿が見たかったのだ。
「はぁ。残念。折角色々考えてたんだけどなあ」
「じゃあ、もっかいやるか?」
挑発的な顔でこちらを見る。今度は負けねぇとでも言いたげだ。
「いいの~?また私が勝っちゃうよ~?」
「ハッ。上等だ。覚悟しとけ」
刀を使われたら勝ち目なんてないけど組手なら五分五分と言ったところだろう。
次は絶対女装させてやる!
そう思った時だった。