第6章 優しさ
「特に何もないなー…」
あれから車内を見て回っているがこれといって変わった様子はない。
ただ、運転手がいないことを除けば。
ーカタンッ
突然後ろのドアから音がした。
神田が来たのかと思いドアに近付く。
「神田ー?何かあったー?」
ーガタガタッ
あれ?ドアが開かないんだけど?
先ほど自分が通って来た扉はまるで鍵がかかったようにビクともしない。
「ちょっと、神田?何してるの?」
扉を抑えてるのか?なんて思ったが、大体神田がそんなことするはずがない。
何かがおかしいと思った私は一旦扉から離れる。
ーガタガタガタッ
反対側から誰かが扉を開けようとしているのか扉が激しく揺れた。
「…誰?」
しかし返事は返ってこない。
すると突然足元の床がぐにゃりと歪む。
「きゃっ…な、なにこれっ」
ズブズブと足元から床に沈んでいく。
抜け出そうにも沈んだ足が引き抜けない。
「かかったな~!エクソシスト~!」
「なっ!」
車内を見渡すも誰もいない。
一体どこに…?
「今頃お前の仲間もあの世でまってるぜ~」
「…イノセンス発動、深影ッ!」
ードォンッ
ひとまず自分の足元めがけて攻撃する。
「ー痛っ…」
おかげでそこから抜け出すことができた。
だが現状何も問題は解決していない。
AKUMAは一体どこにいる?
そこでふと疑問に思う。
「なんで、ここは平気なの?」
先ほど立っていたあの場所だけ足元が歪んでいた。
少し離れた場所にいる今は何の変化もない。
仮にこの列車自体がAKUMAだとするならここに立っているのも危険な筈だ。
「…まさか。いや、でもやってみる価値はあるか。」
私は先ほどの扉の周辺をまとめて攻撃した。
ードンッ
「ギャアアアッ」
「ビンゴッ!」
思った通りだ。列車がAKUMAなんじゃない。
あの扉がAKUMAだったのだ。
恐らく床が沈んだのはあのAKUMAの能力か何かだろう。
まあ、範囲が限定されるようだけど。