第5章 マテールの遺跡
「アレンは優しいんだね…」
「神田には、甘いって怒られちゃいましたけどね」
「神田なら言いそう。でも、…きっとどっちが正解とかないんだよ。私にも分からないもん」
ただ…アレンのこの優しさはきっといつか自分自身を苦しめる。
神田とは真逆に見えて実は似ている、そう思った。
「あんな…。うわっ!」
「ほら、安静にしてて!」
アレンの体を引き寄せ膝枕をして上げる。
「誰も見てないから。…泣きたいときは泣いていいんだよ」
そう言うとアレンは一瞬驚いたように目を見開き、声を殺して泣いた。
私の耳に聞こえてくるのは綺麗な人形の歌声だけだった。
あれから一日が経った。
AKUMAが現れる様子もなくただ目の前には人形が歌い続けているだけ。
「神田…大丈夫かな」
神田の怪我の具合が気になる。出来れば今すぐ確認をしに行きたいところだが、そういうわけにもいかない。
それにしても…ずっと聞いていたせいかすっかり唄を覚えてしまった。
思わず一緒になって口ずさんでしまう。
「Lacrimosa dies illa~♪」
「綺麗ですね」
「…ビックリした!もう大丈夫なの?アレン」
「はい。迷惑掛けちゃってすみません」
「迷惑だなんて思ってないよ。仲間なんだから助け合って当然!」
私がそう笑顔で言うとアレンもつられて笑顔になる。
やっぱり笑顔が一番だよね!
「アレン、神田の様子はどうだった?」
「神田なら命に別状はないそうです。ただ全治五ヵ月の重傷だそうです」
「…そっか」
命に別状はないと知りホッとする。